相談前
50歳手前で、現場でバリバリ働いていると言った印象の方で、ご職業は中小企業の社長でした(以下、Aさんと言います。)。
性格も決して上から物を言う方ではなく、物腰の柔らかい、人当たりの良い方でした。
当職がご相談内容を聞くと、Aさんは話しだしました。
「入社したばかりの従業員で、数十万円貸しました。少しずつでもお金を返すと言っていたので信じてしまったんですよ。
その後、多少の返済はありましたが、今は、返してくれません。
また、会社をいきなり辞めて今は連絡不通です。私からの電話に出ませんし、手紙を出しても連絡がありません。
貸したお金の回収は可能でしょうか?」
どうやら、信用していた従業員(以下、Bさんと言います。)にお金を貸して、そのまま逃げられたみたいです。
「借用書はあります。どうか回収したい。
また、当初から俺を騙すつもりであったのか?裏切られた俺の気持ちが分かるのか?返さないならばその理由を知りたい。」
自分が信用していた従業員に裏切られたショックとその怒りがあったのでしょう。
淡々とはではありますが、終始、当職に対して、怒りをぶつける様にお話しをされました。
相談後
当然ながら、借りたお金は返さなければなりません。
しかし、ここは難しいところです。
ご依頼を受けたとしても、Bさんが払うか否かは、わかりません。
そもそも、お金が無いならば、Bさんは、払いたくても払えないわけです。
また、当職の経験則上のお話ですが、この様な相手は、何社もの消費者金融から借入があり、既に信用情報機関の事故情報に名前が載っていて、どの金融機関からも借入をすることが出来な方が殆どです。
その旨、Aさんに説明すると、思い当たる節があったのか、「どこからも借入れすることが出来ないとか言っていたな。」とつぶやいていました。
当職は、Aさんに、「回収の可能性は半々でしょう。」と説明いたしました。
Aさんは、「回収というよりも、私の気持ちの問題が大きい。
信じてお金を貸したのに裏切られて悔しい。回収出来なくても構わない。先生から督促してください。」と債権回収のご依頼を受けました。
ところで、債権回収は、いわば根気です。
社長からは、Bさんの住所、名前、電話番号、身分証明書の写し等、Aさんが知っている情報を全て頂きました。
そして、連絡が付く可能性のある情報に虱潰しに連絡しました。
当初、全く連絡が無かったのですが、数週間経って、最後諦めかけていた時に、やっと、Bさんと連絡が付きました。
Bさんも私からの督促に嫌気がさしていたみたいでした。
相手の尻尾を掴んでしまえばこちらのものです。
相手を脅すようなことを言うならば、「強迫罪だ!!」、「侮辱罪だ!!」、なんだのと、難癖を付けられて、支払いを拒まれてしまうこともあります。
Bさんには、こちらの主張を淡々と説明して、何度か交渉の末、分割払い合意書を取り交わしました。
そして、半年以上経った今でも合意書のとおりに返済しています。
社長にも大変喜んでいただきました。
司法書士からのコメント
今回は、上手く回収出来た事例です。
債権回収において、まずは以下の流れが一般的だとは思います。
①書面や電話で督促をする任意交渉。
②支払いをしないならば、「支払督促の申立」や「民事事件として裁判を申立」を行う。
③勝訴や裁判上の和解をしても、なお、支払いをしないならば、給料の差押、口座の差押等の「民事執行を申立」を行う。
しかし、個人間の債権回収は難しいです。
仮に、裁判で勝訴しても、裁判上の和解をしても、そもそも債務者にお金や財産が無いならば、返したくても返せないわけです。
出来ること、出来ないことはありますが、プロの手を借りるならば、回収出来る場合は多数ございます。
お悩みならばご相談下さい。